人類は、長年にわたってエイズとの戦いを続けてきました。
その結果としてHIVウィルスの発見や、抗HIV治療薬の開発など、敵の正体をある部分ではつかんで対処することに成功しています。
しかし、このエイズという強敵がいったいどこからやってきたのかという起源については、今も多くの謎に包まれているのです。
現在、エイズの起源として有力とされている仮設が2つあります。
アフリカのある一部の種族に存在していたものが最近になって流行したという説。
サルなどが保有していたウィルスがこれらの動物を捕獲する際に傷を負った人間の体内に入り、そこから感染が広がったという説です。
しかし、上記の仮説にはそれぞれ異論を唱える声が多いのも事実です。
例えば、アフリカの一部の種族にHIVウィルスが存在していたというのであれば、なぜ現代になってエイズが出現することになったのかという疑問や、
アフリカでなく、アメリカのニューヨークで最初の患者が見つかったことへの疑問、
また、古くからアフリカに存在したというわりに、そのアフリカにエイズの症例が80年代より前にまったく見つかっていないという疑問もあります。
また、サルなどの捕獲で感染したという仮説に対しても、それならば20世紀の後半になるよりも以前にもっと感染の拡大があってもいいはずだという疑問があります。
こうした多くの疑問の裏では、アフリカに古くからあったウィルスにしても、サルなどから感染したウィルスにしても、核実験などの放射能の影響を受けてウィルスが突然変異し、
人に猛威を振るう現在のHIVウィルスになったという説を唱える人や、そもそもHIVウィルス自体が生物兵器であったんどという仮説を立てる人まで出てきています。
かつて、アフリカで使用されたポリオワクチンがサルの肝細胞を使用していたことから、ポリオワクチンこそ、サルが保有していたHIVに近いウィルスを人に感染させHIVを作った犯人だとする人もいます。
ポリオワクチン説は、その後の調査によって可能性は低いと否定されていますが、他のどの説にも、それがエイズの起源だという決め手は現在のところありません。
つまり、実際のところ今でも全くといってハッキリしたことはわかっていないのです。
しかし、どの説にしてみても20世紀になってから、自然発生的にエイズ感染が爆発的に増えたと考えるのはあまりに不自然という側面があり、何らかの形で人の手が加わっているのではないかと疑いたくなるのは自然なことでしょう。
それが、放射能説や生物兵器説のような過激な仮説を生んでいるのかもしれません。
いずれにしても、ウィルス発生の期限を辿ることは、ウィルス根絶の研究にとっても意義のあることです。
今後、更に研究が進むことでエイズの起源が解明される日がくることを願っています。