欧米など、主な先進国では、HIVに新規で感染する人の数は、近年、横ばいか、もしくは減少傾向にあるということをご存知でしょうか。
しかし、主要先進国の一つでもある日本では、依然として新規でHIVに感染する人の数が増えています。
エイズがもとで死亡する人の数も増えており、日本では今でもHIV感染が拡大しているのが、日本のエイズの現状なのです。
では、主要先進国でHIV感染が抑制できているのに対して、同じ先進国である日本のHIV感染だけが拡大し続けているのでしょうか。
その原因を考えてみたいと思うのです。
まず、原因の一つには、日本の学校教育における性教育の未熟さが挙げられると思います。
日本では、性の話題を公にすることは一種のタブーのように捉えられるところがあり、教える側も、教えられる側にも、性教育を恥ずかしいものとして捉えている風潮があると考えます。
日本の性教育の現場で、実際にコンドームを見せ、触らせて使い方を教える現場がどれだけあるでしょうか。
性行為のあり方について、議論をさせるような性教育を行っているところが、どれだけあるでしょうか。
実際のデータがあるわけではありませんが、おそらくほとんどの教育現場では、そのような実践的性教育を行っていないものと思われます。
日本では、ある年齢以上になれば、コンドームで避妊と病気の予防ができることを知らない人はいないでしょう。
しかし、それが実行されていないのは、コンドームを使用せずに性交渉をすることに、どれだけの危険があり、
なぜコンドームを使用しなくてはいけないのかということを、本当の意味で理解できている人が少ないからなのです。
特に若者は、その場の空気に流されて性行為を行ってしまうことも多々あるでしょう。
性行為について議論をするという経験を積んできていない若者のことですから、
当然自分が性行為を行う段階になっても、パートナーと性交渉について話し合うことなどできるはずもありません。
これは、性をタブー視する日本社会の病理といってもいいかもしれません。この、今の現状を変えるには、日本の性教育が変わっていかなくてはならないのです。
日本におけるHIV感染の拡大を止められるのは、有効なワクチンが開発されていない現在では、性教育にしかできないことなのです。
性について話しあうことは恥ずかしいことでも、いけないことでもないということを、若者に教えるのが性教育の役割です。
その上で、望まない妊娠や病気を予防する方法とその大切さを教え、それぞれが身近な問題として、
性について考えられる教育を行っていかなくては、日本でのHIV拡大は今後も変わらないでしょう。
性を扱う教育はデリケートであり、難しいものではありますが、それだけ大切なものなのです。