HIVはどのようにして人に感染するのか、それを知るためにははず、HIVウィルスが体のどこにいるのかということを知らなくてはなりません。
HIVはHIV感染者の血液、精液、膣分泌液、唾液、母乳、尿、涙等の体液に含まれています。
その中で、特にウィルスが多く含まれるのが血液、精液、膣分泌液の3つです。
唾液や尿に含まれているHIVウィルスは微量で、それらによって感染に至ることはないと考えて問題ありません。
母乳については、血液、精液、膣分泌液ほどにHIVウィルスが多く含まれているわけではないのですが、
免疫力の低い授乳期の赤ちゃんが母乳を飲んだ場合には母乳によってHIVに感染することも考えられます。
HIVウィルスがどこにいるのかを知ったところで、HIVの感染経路を考えてみましょう。感染経路は、大きく分けて3つに分けられます。
現在、世界で最も多い感染経路は性行為による感染です。
HIVに感染している相手とコンドームを使用せずに性交渉をした場合の感染確率は0.1から1%と言われています。
これは、HIVに感染している患者の血液が体内に入った場合などと比べると低い確率で、
数字の上だけで話しをすれば、性行為によってHIVに感染する確率はそう高くないと感じる方もいると思います。
しかし、実際には、この性行為による感染が世界で最も多いのです。
それは、性行為は世界中のほとんどの人が行う行為であり、正しい予防知識が浸透していない国も多いことが原因と考えられます。
日本においても、新しく報告されるHIV感染者の感染経路では性行為による感染がトップをしめています。
HIV感染者であるパートナーと性行為を行った場合、精液・膣分泌液・血液中に含まれるHIVウィルスが粘膜をとおって血液中に入り込み、HIVに感染する可能性があるのです。
性器や口内に傷がある場合は、傷口を通じてHIVウィルスが血管に入る可能性が高くなり、感染の可能性も高くなります。
次に、感染経路として多いのが母子感染です。
HIV に感染している母親が妊娠・出産した場合、産まれてくる子供が生まれながらにHIV に感染している、また生まれてから感染してしまう可能性があります。
母親がHIVに感染している場合には30%~40 %の確率で子供にもHIVが 感染するといわれています。
この母子感染は、胎内でHIVに感染してしまうケースと、出産時に産道内の出血を受けて赤ちゃんが感染するケース、母乳によって感染するケースがあります。
胎内感染を防ぐことは現在の医学では難しいと言われていますが、産道感染は帝王切開を行うことで、母乳感染は粉ミルクを与えることで回避することができます。
しかし、医療の発達していない、または貧しい国や地域ではこれらの予防措置を講じることも難しく、母子感染を防ぐことが難しいのが現状です。
最後が、血液を媒介となる感染経路です。
かつては薬害エイズの問題のように、血液を媒介として感染が拡大する事件が世界各国で起こりましたが、
エイズの知識や情報が広がった現代では、主な先進国においては医療機器や輸血による感染のケースはほぼなくなったと言ってもいいでしょう。
しかし、こうした知識が不十分な国や地域では、依然注射器の使い回しによる感染も起こっています。
また、麻薬常用者が注射きを使いまわしたことで、麻薬常用者の間でHIVの感染が広がることもあります。
感染経路を知れば、予防について考えることもできます。この機会にしっかりと覚えておいてほしいと思うのです。