男性の淋菌性尿道炎

男性の淋菌性尿道炎の感染源は、風俗女性が60%といわれています。このことから、感染源も江戸時代からほとんど変わらないということが分かるでしょう。

なお、その性交形態は前述の理由から、オーラルセックス(口腔性交)のみの場合の方が多いともいわれています。

淋菌性尿道炎は排尿時の痛み、外尿道口の発赤や膿性尿道分泌物などが主な症状ですが、精巣上体炎を起こすと発熱、悪寒、戦慄などの全身症状、および陰嚢の腫大、痛みが生じるようです。

診断は、当然ながら専門医にかかることから始まります。

尿道分泌物や初尿検体からのグラム染色標本の顕微鏡検査により行われますが、ときとして培養検査や病原体核酸診断が必要とされる場合も多いようです。

加えて、薬剤耐性淋菌の増加によっては治療無効例や、再発した場合には培養・薬剤感受性検査も行われることがあります。

治療は、薬剤耐性淋菌の増加を考慮した抗菌化学療法。現在では経口薬(内服薬)を長期投与するよりも十分量の薬剤を注射により投与し、

淋菌を確実に除菌する単回投与療法が推奨されており、そこに経口薬が併用されることが一般的な治療法です。

淋病の垂直感染

垂直感染とは、その名の通り垂直に菌を広めて次々と感染させていくことです。

女性の淋菌感染症(淋病)においての垂直感染とは、産道感染により起こり、お腹のなかにいる新生児に、

結膜炎や関節炎、髄膜炎、鼻炎、膣炎、尿道炎、そして敗血症などを引き起こすことを指します。

前述の通り、女性の淋菌感染症は自覚症状に乏しく、「かかっている」ということが分かりにくい病気ですが、お腹の赤ちゃんにはそのような理由は通じません。

妊娠中、あるいは妊娠の可能性がある場合はなおさら、少しでも疑いや違和感を覚えた時点での「できる限り、可能な限り早い対処」が必要といえます。

淋菌感染症の治療はすでに述べたように、適切な処置をを受ければ長引くものではありません。

また、痛みを感じることも抗菌化学療法とは注射と経口薬の服用ですから、治療そのものに痛みや不快感を感じることもほとんどないといって良いでしょう。

妊娠中に気付いたときにはすぐさま医師に相談し、治療を開始してください。

なお、残念ながら新生児に感染し、淋菌による眼疾患が確認されたケースでは、一般的に抗菌剤の静脈注射がすすめられます。

これは、淋菌感染症未治療で分娩に至った場合にも同様に行われる処置です。

耐性淋菌とは

これまでご説明したように、淋病と人間にはとてつもなく長い戦いの歴史がありました。

そして、それは人類の医学の進歩、「抗生物質の開発の歴史」とともにあるのです。

新しい抗生物質が発見されるとその度に「淋病は絶滅する」といわれますが、淋菌は必ずその抗生物質 に対して抵抗力(耐性)を獲得し、また復活してきます。

一言でいえば「いたちごっこ」ですが、厄介なのが「復活してくると、それ以前よりも強くなってしまう」という点です。

近年では、1990年代に発見されたニューキノロン系抗菌剤によって、一時期淋病は激減したものの、

そのニューキノロンの乱用によって数年後には耐性淋菌が勢力を盛り返してしまった、というのが有名な話です。

最近の研究では、このような耐性淋菌の誕生には、口腔に存在する無毒のナイセリア属の関与が大きいことが分かっています。

例えば風邪などのように、本来は抗生物質を必要としない病気に対しても抗生物質を投与することで、

口腔常在する無毒のナイセリア属が自分の身を守るために、抗生物質に対して耐性を得ようとしてしまうのです。

なお、オーラルセックス(口腔性交)などでも同様の経過をたどってしまう可能性があるともいわれています。