淋病をはじめとするいわゆる性病・性感染症の歴史は古く、文献によればローマ時代や古代中国時代にまで遡ります。
ただし、この時代の性病とは「性行為による感染」ではなく、「性器の異常」です。
現在のように、「性行為による感染」が原因となる性病・性感染症の始まりは梅毒。
それは、1493年にコロンブスがハイチ諸島からヨーロッパに戻った際に持ち帰ったものであるといわれています。
日本においての梅毒は1512年、パスコ・ダ・ガマの東方探検によって、インド、中国などを経て初めて持ち込まれたとされるのが有力です。
そのころは唐瘡や揚梅瘡の名で知られ、「湿気などによる炎症」と考えられていましたが、
研究が重ねられるとともに、感染ルートとして「性行為があるのでは」との一定の結論が出されるようになりました。
やがて、江戸時代後半から明治時代に入ると「性行為による感染で起こる病気」といった認識が一般的になります。
それ故に花柳界(歓楽街)で行われている売春と深い関係があるとの見解が示され、ヨーロッパでの呼び名「ヴィーナスの病気(Venereal diseases)」にちなみ、「花柳病」と呼ばれるようになったのです。
結果として花柳病は「遊女や娼妓によって広められる性行為感染症」とされ、検査や病院の設立などの対策が国をあげて進められていきました。
性病、性感染症の歴史2
淋病は1873年、梅毒は1905年にようやく発見され、「花柳病は病原体による感染症である」ということが医学的にも証明されることとなりました。
しかし、それでもその感染を断つことはできず、昭和時代に入ると性病・性感染症はこれまで以上に世の中に蔓延していったのです。
さらに、最も悪化したのは第二次世界大戦終了後でした。
国内の混乱とも相まってさらなる広がりを見せたことから、日本は1948年(昭和23年)、政府主体となって性病・性感染症の根絶に取り組み、結果として「性病予防法」が制定されたのです。
このとき、「性病」との指定を受けたのは淋病と梅毒、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫(第四性病)の4種類のみでしたが、
それから約半世紀後、1999年には新たに制定された「感染症新法」により、これまでの4種類の性病に加え、
新たに含まれることとなったのがクラミジア、ヘルペス、B型肝炎、エイズ(HIV)などです。
しかし、クラミジア、ヘルペス、B型肝炎、エイズなどをはじめとする「新たな性病・性感染症」は、現在もなお増加しており、いまだに根絶には至っていません。
それどころか性の低年齢化によって、20歳に満たない若年層を中心に広まっていることも事実です。