淋病雑学その1

それでは、性病・性感染症のなかでも「淋病」にい注目してその歴史を学んでみましょう。淋病は前述の通り、梅毒と並ぶ「古典的な性病」の一つです。

その記録を遡れば古く、古代の中国やエジプト、旧約聖書にも残されていますが、「最も正確」とされる記録は紀元前400年ごろ、医学の神様といわれるヒポクラテスが残したものといわれています。

驚くべき事柄は、その当時と現在とで淋病の症状にほぼ変化が見られないこと。

淋病は古典的な性病であると同時に、その病原体が根絶することも、変化することもなく生きながらえてきたのです。

また、いまでこそ「梅毒と淋病は違う病原体である」という知識が一般的にも広まっていますが、淋病は長らく「梅毒の症状の一つ」と考えられてきました。

それも、つい150年ほど前まで、医療の先端をいくヨーロッパでそううたわれてきたのです。

これは、梅毒にかかった患者の多くが、同時に淋病にもかかってしまったということが理由にあります。一つの性病にかかると、ほかの性病にかかりやすい。

それは現在でも続く事実です。ちなみに、淋病は医学用語でGonorrhoea。

これは「精液」を意味する“Gono”と、「流れる」を意味する“rhein”からなる言葉。おそらく、淋病の特徴である膿を「精液が漏れ出たもの」と解釈したのでしょう。

淋病雑学その2

やがて、1873年になると淋病を引き起こす病原菌である「淋菌」が発見されました。

日本では、ちょうど明治維新の時代です。淋菌の学名は“Neisseria Gonorrhoea”。これは、発見者であるナイセリア博士にちなみ、名付けられたものです。

日本では、この淋病の話を「性教育の一つ」として聞かせることも多々ありました。

地方によっては古くから、「淋病になると女郎にも相手にされなくなるから、おちんちんが淋(さみ)しくて泣く病気だ」などといわれてきたようです。

これはそれほど昔の話ではなく、ほんの数十年前まで語り継がれてきた、いわば教訓のようなものであるといっていいでしょう。

このように、小さいときから子供に「淋病とは何か」を暗に教えることで「気を付けなくてはいけない」とすり込ませてきたのです。

淋病は古代から存在する病気ゆえに、「ふるくさい病気」「過去の病気」などと思われがちですが、

そこから安易に「恥ずかしいけれど、たいしたことない病気」と考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、淋病を甘く見てはいけません。

前述のように、紀元前400年ごろから形を変えずに生き残ってきた病気なのですから、私たちはこれからも大いに警戒し、根絶を目指す必要があるのです。