普通は、前兆を伴わない偏頭痛のほうが多く、また同じ人でも前兆がいつも現れる訳ではありません。
痛み方、痛む部位のほか、女性に多いこと、家族の中に同じ頭痛もちの人がいるなどの点は前兆をともなう偏頭痛と同じですが、前兆を伴わないタイプは、頭痛の持続時間がやや長い点が異なると言われます。
ただ、前兆を伴わない偏頭痛でも、「何となく頭痛が来そうだ」という漠然とした予感を感じる人があるそうです。
食欲が通常以上に出る、体がむくむ、甘いものを無性に食べたくなる、眠気を感じるといった状態の後に頭痛が起こると言います。
こうした漠然とした症状については「予兆」とよんで、前兆とは区別されます。
前兆のない偏頭痛は判断しづらいことになりますが、疑わしい場合、通常は次のような基準で偏頭痛か否かの診断をすることになっており、次の症状(発作)がいずれも5回以上あれば、偏頭痛とみなされることになります。
(1)
頭痛発作が4時間以上、3日間持続する
(2)
以下の2項目以上を満たす
頭の片側が痛む
痛みが脈に合わせて起こる
日常生活に支障をきたすほどの頭痛
日常的な運動(階段の昇り降りなど)で症状が悪化する
(3)
頭痛中、少なくとも以下のうちいずれかの症状が存在する
嘔気もしくは嘔吐
光と音に対して過敏になる
前兆を伴う偏頭痛
予兆や前兆があることが偏頭痛の特徴です。
頭痛が起こる30分〜数時間前に前駆(ぜんく)症状(=病気の起こる前兆として現れる症状)が現れます。
これは、約25%の人が経験するとされます。視力、感覚、バランス、動作などに一時的な異常が現れるもので、発作前に強く起こります。
視野の中にキラキラ光るジグザグの線が現われ、視野の片側あるいは中心部が見えにくくなる「閃輝暗点(せんきあんてん)」という症状や、半身にしびれや脱力感を感じるなどの症状が現れる人もあります。
この前駆症状は長くて60分続きます。それがおさまると、頭痛が始まります。
痛みは、ズキンズキンと拍動性(はくどうせい。心臓の鼓動のような動き)で、頭の片側に感じるのが普通です。
痛みは、前頭部、側頭部を中心に1〜2時間でピークに達し、数時間〜2日間くらい続きます。痛みのピーク時には吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)を伴います。
姿勢を変えたり、歩行運動をしたりすると痛みが強くなります。このため、じっと床に伏せるしかない苦痛を味わうことになります。
健康な人には理解しがたい状態になるため、周囲から仮病とみなされたりすることもあり、精神的な苦痛も受けることもあると言います。
このような頭痛が反復しておこり、1か月に数回に及ぶこともあります。これが前兆を伴う偏頭痛なのです。
患者さんは女性が多く、10〜20歳代に最初の頭痛がおこり、以後、くり返し起こるようになって、いわゆる「頭痛持ち」になります。