禁煙外来という専門科目があることをご存知ですか?これは、タバコをやめたい人に向けて作られたもので、健康保険も適用されている、禁煙専門の外来です。
自分の意志でタバコをやめられる人もいますが、このように専門外来までできてしまうくらい、禁煙はなかなか本人の思ったとおりにはいかないものなのです。
何しろ、患者の健康を守るはずの医師でさえ、こと自分の禁煙となると苦労するというのですから。
では、なぜ禁煙は、ここまで困難なものなのでしょう。それはタバコに依存性があることと深く関与しています。
喫煙歴や個人差はありますが、タバコを断つということには相当なストレスがかかるのです。タバコの依存性が高い理由は、ニコチンにあります。
ニコチンは揮発性のある無色の油状液体で、毒物として指定されているアルカロイドの一種です。タバコの葉には、このニコチンが多く含まれています。
動物実験などからも明らかになっていることですが、ニコチンは脳の広い分野に影響を及ぼします。
特に依存性に関係するドーパミン(ドパミン)神経を強く活性化させ、快楽的な感覚を与えることがわかっています。
一度ニコチンによる快楽を覚えてしまうと、脳は再度これを求めます。そしてタバコを吸いたくなるのです。
この過程を繰り返し、喫煙し続けると、しだいにニコチンを外部から摂取しない限り、脳ではドーパミンの神経伝達がにぶい状態となってしまいます。
ドーパミンは快感ホルモンと呼ばれることもあるくらいで、この働きが低下すると、人は意欲を失ったり、しばし不安に襲われてしまいます。
こうなってくると、ニコチンへの欲求が自覚できるまでとなり、タバコを手放さずにはいられなくなります。
また、このようなあとにタバコを吸った喫煙者は、とてもリラックスした気分に浸れます。
しかし、このリラックス状態は、実はニコチンの依存によるもので、実際には喫煙によって一時的にドーパミンが活性化しているに過ぎないのです。
これは、一度楽しい刺激を感じたあと、つぎからはもっと強い刺激がほしくなるのによく似ています。
このようなタバコへの依存は、喫煙を始めた年齢が低くければ低いほど陥りやすい傾向があると言われています。
また、喫煙者の約7割がすでにニコチン依存症であり、4割にいたってはその自覚さえないのだという報告もあります。
長期にわたり喫煙を続けている人の過半数が、将来的に自分が肺ガンになる可能性が高いことをわかっていながらタバコをやめられないでいるのです。
禁煙にチャレンジした人の大半が、一度は失敗しています。
そこで、なかなかタバコをやめられない喫煙者のために、禁煙外来の他、さまざまな禁煙グッズが開発されているというわけです。