アイデアのつくり方 要約
著者: ジェームス W. ヤング
はじめに
今回はジェームス W. ヤングが著した「アイデアのつくり方」を解説します。多くの人は、アイデアが突然降ってくるもの、あるいは何もないところから生まれるものだと思いがちです。しかし、ヤングはそれが誤解であることを強調します。アイデアは今ある要素の新しい組み合わせによって生まれるものなのです。これから紹介する方法を理解し、実践することで、日常生活や仕事の中で新たなアイデアを生み出す力を養うことができます。
アイデアの本質
アイデアの本質は、「既存の要素の新しい組み合わせ」にあります。新しい製品、音楽、料理、映画など、すべての創造物は過去の要素を組み合わせることで生まれています。この考え方は、クリエイティブな作業を行う上で非常に重要です。ピカソは「偉大な芸術家は盗む」と言い、他人の作品やアイデアを積極的に取り入れ、それを新しい形に変えることの重要性を説いています。
松下幸之助もまた、他社の製品を研究し、それに独自の要素を加えることで成功を収めました。彼の言葉にある「よそさんの品物のいいところを徹底的に研究して一つ二つ足せばええんや」という考え方は、単なる模倣ではなく、既存の要素に新たな価値を付加する創造的なプロセスを示しています。アイデアを盗むことは悪いことではなく、むしろ創造性を発揮するための一つの手段であることを理解しましょう。
データの収集
アイデアを生み出すための第一歩は、データの収集です。新しいアイデアを生み出すためには、多くの情報や経験を積む必要があります。興味のある分野について深く学び、多くのものを見聞きすることで、頭の中にたくさんの要素を蓄積します。新しい映画を作りたいなら、多くの映画を観る。新しい料理を作りたいなら、多くの料理を食べる。そうやってたくさんの体験を積むことが、アイデア生成の基礎となります。
情報収集の段階では、好奇心を持ち、積極的に様々なことに触れることが大切です。新しい映画を作りたい場合、異なるジャンルやスタイルの映画を観ることで、多様な視点やアイデアを得ることができます。同様に、新しい料理を作りたい場合も、異なる文化や料理法を学び、実際に試してみることが重要です。多くの情報や経験を積むことで、頭の中に豊富な材料が蓄積され、後の段階でのアイデア生成に役立ちます。
データの組み合わせ
データを集めたら、次はそれを組み合わせる作業です。ヤングは、興味深い情報や心に響いたものをメモしておくことを推奨しています。例えば、新しい映画を作りたいなら、面白かったシーンや感動した瞬間をメモに取ります。こうしてデータを整理し、新しい組み合わせを探すことで、斬新なアイデアが生まれます。
メモを取る際には、自分が何に感動したのか、どの部分が特に興味深かったのかを具体的に書き留めることが重要です。新しい組み合わせを見つけるためには、異なる要素を繋げる試みを繰り返し行う必要があります。AKB48のアイデアを生み出した秋元康も、いろんな記憶を組み合わせることで新しいアイデアを発見しました。アイデア生成の過程では、異なる視点や情報を繋げ、新たな価値を見出す努力が求められます。
放置の重要性
データを集め、組み合わせた後は、一度問題から離れてリラックスすることが重要です。ヤングはこれを「放置」と呼びます。問題を完全に放棄し、リラックスすることで、頭の中で情報が自然に整理され、新しいひらめきが生まれやすくなります。
例えば、ハリー・ポッターの作者、J.K.ローリングは、1990年の夏にマンチェスターからロンドンに向かう列車の中でハリー・ポッターのアイデアを思いつきました。決して机の前でうんうん唸りながらアイデアを思いついたわけではありません。リラックスできる活動、例えば散歩や音楽鑑賞、映画観賞などを通じて、頭をリフレッシュさせることが大切です。リラックスすることで、脳に余白ができ、創造性が高まるのです。
再考とひらめき
リラックスした後は、再び問題に戻り、深く考え続けることが大切です。ヤングは、このプロセスを「再考」と呼びます。時間が経つことで、問題の見え方や感じ方が変わり、新しい視点からアプローチすることができます。
前に見えなかった組み合わせや、より良いアイデアが浮かび上がることがあります。例えば、あるアイデアが最初は斬新に見えても、再考することでその欠点が見えてくることがあります。また、新しい視点から再考することで、さらに優れたアイデアや他の組み合わせが浮かび上がることもあります。多くのクリエイティブな人々が、このステップで素晴らしいアイデアを思いついています。無意識のうちに蓄積された情報が、新しいひらめきとして表れることが多いのです。
アイデアの活用
最後に、出てきたアイデアをどのように活用するかを考えることが重要です。ヤングは、アイデアが出た後も、それをどのように人々の役に立てるかを考え続けることが必要だと述べています。
例えば、牛から牛乳が出たとしても、そのままではなく、殺菌したりバニラアイスにしたりと工夫を加えることで価値を高めます。同様に、アイデアを実際のプロジェクトや製品に応用し、人々の生活を豊かにする方法を見つけることが重要です。出てきたアイデアをどのように使い、どのように価値を最大化するかを考えることで、アイデアが実際に人々の役に立つ形になります。
まとめ
アイデアは、既存の要素を新しく組み合わせることで生まれます。この本で紹介した5つのステップ、データの収集、データの組み合わせ、放置、再考とひらめき、そしてアイデアの活用を通じて、誰でも素晴らしいアイデアを生み出すことができます。
たくさんの経験を積み、多くの情報を集め、それらを組み合わせ、リラックスし、再考し続けることで、斬新なアイデアを実現しましょう。日常生活や仕事の中で、これらのステップを実践し、新しいアイデアを生み出す力を養っていってください。創造性は特別な才能ではなく、誰でも習得できる技術なのです。