橘玲氏の著書『専業主婦は2億円損をする』は、専業主婦の経済的価値とリスク、現代社会における女性の役割について鋭く考察した本です。専業主婦が直面する経済的問題を具体的なデータを基に分析し、女性がどのように生きるべきかを提言しています。本書の主要なポイントを要約します。

専業主婦は2億円損をする　要約

著者　橘玲

経済的損失

橘氏は、本書の冒頭で「専業主婦は2億円を損する」と断言しています。この主張の背景には、女性が専業主婦になることで得られない収入の大きさがあります。具体的には、大学を卒業した女性が60歳まで働き続けた場合の生涯賃金が約2億1590万円に達するというデータに基づいています。

専業主婦になると、この2億円を稼ぐチャンスを失うことになります。さらに、高専や短大卒の女性でも1億7630万円の生涯賃金が見込まれるため、専業主婦になることで大きな経済的損失が生じます。

もし女性が非正規の バイトやパートとして働いた場合は生涯賃金は1億2430万円です。これでも大卒の 女性が正規で働いた場合と比べて1億円の差が出てしまいます。非正規のバイトやパートとして働いた場合でも、正規社員と比べて生涯賃金に大きな差が出ることがわかります。

日本における専業主婦の現状

厚生労働省のデータによると、日本では専業主婦の世帯が依然として約30％存在しています。これは、女性の3人に1人が専業主婦であることを示しています。専業主婦が家庭を守るという伝統的な価値観がまだ根強く残っているためです。

2. 専業主婦の社会的リスク

家来化のリスク

専業主婦は生活の全てを夫に依存しているため、力関係が自然と夫が上で妻が下になります。これは、専業主婦が経済的に独立していないため、夫から「誰のおかげで飯が食えるんだ」と言われても反論できない状況を生み出します。結果的に、専業主婦は家来のような立場になり、ストレスがたまる生活を送ることになります。

経済的依存のリスク

専業主婦は一旦正社員のキャリアを断ってしまうと、再び正社員として働くことが難しくなります。多くの場合、パートや非正規の仕事にしか就けず、経済的な独立は困難です。これにより、一生イライラを抱えたまま過ごすことになります。

自己決定権の欠如

専業主婦は生活の全てを夫に依存しているため、自己決定権がありません。夫との関係が悪化した場合でも、自分でお金を稼ぐ力がないため、離婚することが難しくなります。これは、専業主婦が夫の経済的支援を失うことで貧困に陥るリスクが高いからです。

3. 経済的独立と幸福

自由と幸福の関係

橘氏は、データに基づき、人が幸福を感じるのは自由な生き方をしている時であると指摘します。経済的独立は自由と幸福の前提条件であり、専業主婦は経済的に夫に依存することで自由を制限され、幸福度が下がると述べています。

経済的独立の重要性

経済的独立を持つことで、専業主婦は自分の生活を自分で決定する力を持つことができます。夫から「誰のおかげで飯が食えるんだ」と言われることもなく、夫婦関係が対等になります。これにより、真の愛情や信頼が生まれるのです。

4. 専業主婦に対する国際的な見解

海外における専業主婦の状況

日本とは異なり、先進国では専業主婦の割合が非常に低いです。海外では専業主婦はニートと見なされ、経済的に自立していないと評価されます。例えば、アメリカでは本当の富裕層の家庭でのみ、妻が専業主婦であることが一般的です。これは、夫の年収が数億円レベルである場合に限られます。

国際的な比較

日本では年収が1000万円にも満たない家庭で専業主婦が存在することが多いですが、これは非常にリスクの高い選択肢です。夫と離婚した場合、専業主婦は経済的に困窮する可能性が高いため、先進国では共働きが当たり前となっています。

5. 子育てとキャリアの両立

実家の両親や家政婦の活用

橘氏は、子育てとキャリアの両立を実現するためには、実家の両親や家政婦の手を借りることが重要であると述べています。韓国や台湾、中国では、祖父母が子育てに協力することが一般的であり、日本でもこのような家族の協力が求められます。

フリーランスとしての働き方

もし正社員を辞めていたり、自分で子育てをしたい場合は、フリーランスとして働くことが一つの解決策です。ブログ、YouTube、アフィリエイトなど、自宅で稼ぐ方法を見つけることで、子供と一緒にいる時間を確保しつつ、経済的独立を維持できます。

6. 幸せになるための条件

夫婦で1600万円を目指す

橘氏は、年収800万円がお金で得られる幸福度の限界値であると述べています。夫婦で合わせて1600万円の収入があれば、お金の心配をせずに生活でき、幸福度が高まるとしています。夫一人で1600万円を稼ぐよりも、夫と妻が協力してそれぞれ800万円ずつ稼ぐ方が現実的です。

対等な関係の重要性

夫婦が対等な関係であることが、幸福な家庭生活の基盤です。専業主婦ではなく、共働きを選ぶことで、夫婦は経済的にも対等な関係を築くことができ、これが心の余裕や円滑な夫婦関係につながります。

まとめ

橘玲氏の『専業主婦は2億円損をする』は、専業主婦の経済的価値やリスク、現代社会における女性の役割について深く掘り下げた一冊です。専業主婦が果たす役割を再評価し、女性が経済的に自立することの重要性を説いています。結婚生活におけるお金の問題を具体的に分析し、夫婦がどのように経済的に安定した生活を築くかについて示唆を与えてくれます。

現代の家庭や結婚における経済的な問題を理解し、より豊かで安定した生活を送るための指針として、この本は非常に有益です。専業主婦であることの価値やリスクを理解し、どのように経済的に自立するかを考えるきっかけとなるでしょう。

このように、橘玲氏の『専業主婦は2億円損をする』は、専業主婦の経済的価値を具体的に示し、現代社会における女性の役割を再評価するための重要な視点を提供しています。本書の内容を理解し、実践することで、より充実した生活を実現することができるでしょう。