彼との結婚が決まった事を母に伝えるべきかどうか、私は迷っていました。
両親は十年前に離婚し、私は希望して父の元に残ったのです。
母はデザイナーという職業を母親よりも優先したのですから、私はそれから一度も母には会っていませんでした。
彼はやはり母に伝えるべきだと言い、一緒に母の所へ行ってくれたのです。
母は小さいけれど自分のブティックを経営しています。
突然の訪問に驚いたようでしたが結婚の事を伝えるととても喜んでくれました。
結婚式の招待状を送るからと約束して帰りました。
結婚式には親戚や友達がたくさん出席してくれて、私は幸せでした。
何より嬉しかったのは母が手作りのウェディングドレスを届けてくれた事です。
母への招待状の返事は欠席でした。
母は父や祖父母へ遠慮したのです。
勝手をした自分が娘の結婚式に出席する事は許されないと書いてありました。
そのかわりに心をこめてウェディングドレスを縫うから…と。
私は母の思いのたくさん詰まったウェディングドレスで彼の元へ嫁ぎました。
ウェディングプランナーさんがドレスの事はみなさんに紹介しましょうと言い、母の手紙を読んでくれました。
父や祖父母もわだかまりを解いてくれたようです。
疎遠になっていた母との繋がりがもう一度でき、長かった両親の冷たい関係まで少し修復したような気がします。
結婚式って当人だけではなく関わった人達をも幸せにしてくれるのだと、身を以て感じました。
これからは母のもとも訪ね、母子の関係も深めて行きたいと思っています。