エイズは親から子へ遺伝するって本当ですか?

親がHIVに感染したり、エイズを発症している場合、HIV・エイズは子供に遺伝するか?という質問を受けることがあります。

HIVは人の体に感染すると、人の遺伝子に組み込まれて増殖するというメカニズムがあることから、子供にも遺伝してしまうのではないかという不安を持つ方もいらっしゃるようなのです。

しかし、心配はいりません。エイズとは、HIVというウィルスに感染することで発症する病気であり、親から子供に遺伝するものでは全くありません。

ウィルスが遺伝子に組み込まれるといっても、その遺伝子が子供に遺伝し、子供がエイズを発症するということは起こりえませんので安心していただいて結構です。

また、エイズが親から子に遺伝すると勘違いされるのは、HIVに感染している親から生まれた子供がHIVに感染しているというケースがあることも原因の一つだと思います。

これは、HIVが遺伝したわけではなく、母親がHIVに感染していたために、妊娠、出産の段階で母子感染をしたために起こったものです。

HIVの感染経路は、血液や精液、膣分泌液によるものですので、性行為による感染か、注射針の使い回しや、ウィルスに汚染された血液製剤の使用などです。

母子感染の場合には、子宮内で感染する場合や、産道で母親の体液に触れることで起こる感染、母乳による感染が感染経路になっています。

どの感染経路も、遺伝とは全く関係ないものです。

HIVは遺伝とは全く関係がありませんので、父親がHIVに感染していたとしても、母親が妊娠した時にHIVに感染していないのであれば、子供がHIVに感染している可能性はありません。

父親がHIVに感染しているのであれば、母親も子供も感染しているのではと思うかもしれませんが、HIV感染者とセックスをして、たとえ妊娠したとしても母親がHIVに感染する確率は100%ではありません。

父親がHIVに感染していて、HIVに感染した子供が生まれるとしたら、それは父親から母親に感染し、母親から子供に母子感染したということです。

HIVは遺伝しませんので、HIV治療の発達によってHIVに感染していても、結婚したり子供を持つということが夢ではなくなってきています。

かつてはHIVに感染した場合には、感染拡大防止の観点から結婚や子供を諦めざるを得ないという時代もありました。

しかし、現在では、妊娠の時点で母親のHIV感染が分かっている場合には、母子感染のリスクを最小限抑える方法があります。

また、人工授精や体外受精を行うことで、パートナーに感染を広げることなく子供を授かる方法もあります。

現在は費用の問題や、まだまだ二次感染のリスクがゼロではないHIV感染者の生殖問題ですが、HIV感染者の生殖補助医療も年々進歩していますので、

HIVに感染しても、家族を持ち、子供を持つことを諦めなくてもいい時代がもうすぐやって来ることでしょう。