お通じの不調に悩んでいるときに、広告などで見かける「宿便取り」という言葉が妙に気になったことはありませんか?
「それって、やればラクになれるのかな? どんなことをするんだろう? というか、そもそも『宿便』ってなんだろう? 便秘とは別物なのかな?」
ぼんやりと気になりつつも頭の中にとどこおっている、これらの疑問にお答えします。
まずは、便秘とは、排便困難――便がなかなか出せず、その頻度や量がひどく減っている状態のことを言います。
そして宿便とは、滞留便――便秘によって腸の中にとどこおって留まっている便のことです。
つまり、便秘とは「状態」のことで、宿便とはそれによって生じる「もの」のことなのです。
宿便は、美容・健康関連商品の宣伝文などでは、腸壁のヒダや絨毛にヘドロ状にこびりついて蓄積している便のことだと説明されることも多いです。
しかし、医学的には、そのような現象は起こらないとされています。
腸壁は常に粘液でおおわれていて、蠕動運動によって波を打つ水面のようにヒダの「山」と「谷」も常に入れ替わっていき、
腸壁の細胞も日々さかんに代謝してどんどん入れ替わっていくので、「こびりついている便」は存在し得ないのです。
そして、巷でよく耳にするキャッチコピーとしての「宿便取り」とは、この「こびりついている便」を取り去ることを差す場合が多いのです。
このような、いわゆる「疑似科学」に安易に飛びつくべきではありません。
本当に宿便を取りたいのなら、上記の「滞留便」を取り去ることを考えるべきです。
と、いうことは……。
そうです。正しい「宿便取り」とはすなわち、ふつうの便秘対策のことなのです。
「な~んだ、話が振り出しに戻っちゃった」と残念がらず、「基本に立ち返ろう」とポジティブに受け止めていただければと思います。
センセーショナルに宣伝される「手っ取り早くラクになれそうな新しい手段」をアテにするよりも、十分に信憑性のある、日常的な便秘対策を大事にしましょう。